第2回 イヌの学習のしくみとコミュニケーションについて
ひとことメッセージ:
3月11日の東北地方太平洋沖地震の被災地の皆様におかれましては、謹んでお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復興を目指して、全国民が一致団結をして復興支援に取り組んでいかなければならない現状を、日々強く感じている今日日です。
心は被災地に。
目は未来に向けて。
節電、節制、寄付など、自分に出来ることから少しずつ、支援活動に取り組んでいきましょうね。
★TOPICS
先日、川崎市のペットショップさんで、ワンコイン(500円)ハウストレーニング
講習会&何でもしつけ相談会を開催!お客様のワンちゃんとの1枚です♪
「棄てられないイヌ、棄てない飼い主を創ろう!」をテーマに、これからも継続
してまいります。
みなさん、こんにちは。
ドッグトレーナーのみとちです。(←認定試験合格したので“見習い”をとってみました 笑)
さて、第2回目のテーマは『イヌの学習のしくみとコミュニケーション』です。
少々アカデミックな内容になりますが、共通言語をもたないイヌとのコミュニケーションをよりクリアにするには、欠かせないお話ですよ^^
最後までお読み頂ければ嬉しいです♪
イヌは人間の言葉を理解できるの?
結論から先に言っちゃいますよ(笑)
イヌは、人間の言葉を話すことはもちろんできませんし、実は言語としての意味も理解することもできない動物です。
「え?でも私が名前を呼ぶとちゃんとこちらにくるのに・・・」
「いえいえ、うちの子だけは特別に違いないわ!」
そんな声が聞こえてきそうですね(笑)
確かに、飼い主さんが名前を呼ぶと、嬉しそうにしっぽをフリフリやってきますよね。
悲しいことがあった時、泣き顔のあなたの顔をのぞき込んで、ほっぺを伝う涙をぺろっとなめて、あたかも「大丈夫だよ!」と励ましてくれているかのように振る舞うワンちゃんもいるかもしれません。
でもそれは、言葉の意味を理解して起こされた行動ではなく、イヌたちならではの学習方法で身につけたコミュニケーション手法なのです。
人間のさまざまな行動をつぶさに観察をし、折々に発せられる合図(みぶりや言葉)を、彼らなりの独自の方法でケーススタディーをし、関連づけをして行動しているんですね。
不思議ですよね〜
そうです。
イヌには独特の「学習のしかた」があるのです。
飼い主さんである人間が、そのことをしっかりと理解していれば、たとえ言葉が通じないイヌに対してでも、飼い主さんの意図をきちんと理解させ、こちらの望ましい行動を導き出すことができるのです。
より質の良いコミュニケーションが実現できれば、今以上に、もっともっとわが愛犬たちのことが愛おしく思えてくるはずです!
さあ、では彼らはどのようにして学習をして、私たちとコミュニケーションをしているのでしょう?
そのしくみについて、触れていきましょう!
イヌの学習方法
人間とイヌの学習のしかたはとても良く似ています。
私たち人間は、言葉で自分の考えを表現し、アタマの中では「現在・過去・未来〜♪」をいつでも、自由に行き来できる脳をもっています。(何十年も前のロマンチックな思い出を振り返り、優しい気持ちになれたりするシアワセな動物です!)
そして、家族や学校、友人たちなど、さまざまなコミュニティの中からあらゆる物事を観察し、時には模倣(マネ)をしたりして、学習を繰り返し成長していきます。
「イチロー選手のような野球選手になりたい!」と思って、同じメーカーのグローブやバットを使ってみたり、トレーニング方法をマネしたりしますが、そうして次の世代のイチロー選手が生まれるわけです。
そして成長の過程で、さまざまな「報酬(=良いこと)」と「罰(=嫌なこと)」を通して、それぞれの価値観をはぐくみ、知性、良心、思いやりの心、善悪を判断する力などを身につけて、人格形成がされていきます。
反対にイヌは、ああ見えて(あんなに可愛らしいのに^^;)生まれつき結構な利己主義者なんですね。
【利己主義的=自分の利益だけを追求し、他をかえりみないこと】 ←えーってカンジですか?^^;
要するに、彼らは人間のような価値観や知性を持ち合わせていません。
「自分にとっていいことがある」と思えば、それを獲得するために積極的に行動する動物なのです。
その1: 元々予測するように生まれついていないものを関連づけて学習する方法
イヌはあらゆることを、「条件づけ」、「関連づけ」と言われる方法で学習します。
関連付け・・・思い当たること、ありませんか?
これが結構あるんですよー!!
わが家の4ワンズの例をあげてみましょうか。
ワンズのトリーツを出すためにキッチンの上戸棚を開けるのですが、たまたまレンジフードにはりついたキッチンタイマーに扉が触れるため、開けるたびに必ず、「ピピッ」と電子音がなります。
しばらくするとトリーツを取り出す以外の時でも、キッチンタイマーが
「ピピッ」となるたび、4ワンズはシュタタタ!とキッチン入り口の柵前に
集合し、きちっと整列して、キラキラと私を見つめるようになりました(笑)
「ピピッとなると美味しいトリーツが出てくるっ♪」と学習したわけです。
本来、「ピピッ」となるキッチンタイマーと、トリーツは全く関連性がないものですが、結果的にトリーツが出てくることで、4ワンズは「音」と「ごほうび」を関連づけたわけです。
逆の意味の「関連づけ」もよくありますね〜
たまにしか会わない先生にあちこちさわられるし、お注射なんかもされてイタイ思いをする動物病院。
苦手なワンちゃんも多いのではないでしょうか?
たとえば、動物病院に行くときいつも車に乗せられると、ワンちゃんは「車」と「動物病院」を関連づけて、動物病院だけではなく、車のことも苦手になったりして困っちゃった(汗)というケースもありました。
不快なできごとと関連づけてしまうこともあるんですね。
※専門的なお話をしますと、これらの学習方法は、2大学習方法のひとつで「古典的条件づけ」とよばれる学習方法です。人間の心理学、行動学にも通じるものですが、これが専門用語は多いわ表現は難しいわでムダに難解です^^;
その2: イヌが行動したあとに起こる出来事と関連づけて学習する方法
そしてイヌは、自分の行動によって、結果を良くも悪くもできることを、よく理解しています。
「こうしたら、こうなる」
「ああだったら、そうなる」
という具合です。
なにか行動をおこすこと(=例えば、オスワリをする)によって、その後におきる出来事(例えば、トリーツがもらえる♪)を操作することができるということを、本能的に知っているということなのです。
この学習能力のしくみは、簡単にご説明すると、以下のようなことです。
このしくみを上手に使うことで、イヌから望ましい行動を自由自在に引き出すことができるのです!
なんと素晴らしい学習能力ではありませんか!
ここはひとつ、フランに登場してもらい、ロールプレイングゲーム風に例題をご説明してみましょう^^
学習のしくみ【1】
良いことが加えられることで学習します(=イヌの行動がなにか良いことを起こすのです)
私のとなりにフランが座るとき、いつもニッコリ笑顔でオヤツをあげると、フランは私のとなりに座る行動が増えます。「ママのとなりに座るといいことがあるみたい♪」と、フランは学習しました!
(お写真はフセですが^^;同じことですねん→)
学習のしくみ【2】
良いことが取り去られることで学習します(=イヌの行動により良いことがなくなってしまいます)
私がリビングに入ったとたんフランが飛びつくので、すぐにリビングを出て行ってしまいます。
私のことが大好きなフランは、私がどこかに行ってしまうことで、飛びつく行動は減るはず。
「ママに飛びつくと、ママは出て行っちゃうのね(;_;)」と学習しました!
学習のしくみ【3】
嫌なことが加えられることで学習します(=イヌの行動により何か嫌なことが起こるのです)
フランはこたつのテーブルの上に上がると、私から「こらっ!」と大声で叱られクッションを投げられます。
飛ぶクッションも、大声で叱られるのも、フランにとって嫌なことなので、こたつに上がる行動が減ります。
「こたつに上がると、クッションがとんでくるのね(;_;)」と、フランは学習しました!
学習のしくみ【4】
嫌なことが取り去られることで学習します(=イヌの行動が不快なことを取り除くのです)
フランがお散歩中にリードを強くひっぱると、私はその場に立ち止まり、前に進みません。
偶然リードがゆるんだときに、また歩き出すことで、リードを引っ張る行動は減ります。
「リードがゆるむと、ママは前に進んでくれるんだ♪」と、フランは学習しました!
さあ、もうお気づきですね。
フランにして欲しい「望ましい行動」を引き出すためには、上記の【1】から【4】の学習のしくみをつかって、
飼い主である私がコントロールできるんですね!
これは、私がドッグトレーナーだからできることではなく、イヌの学習本能なのです。
そしてそれを伝えていき、よりよいイヌとのコミュニケーションをサポートしていくのが、私たちドッグトレーナーの役割でもあるのです。
※またもや門的なお話をしますと、この学習方法は、2大学習方法のもうひとつで「オペラント条件づけ」とよばれる学習方法です。難しいですよね、トレーニングの専門用語って^^;
イヌの行動のしくみや本能を理解してトレーニングを行うことにより、効果性が高く、またイヌへの負担も最小限にとどめることができます。
イヌを「動物」としてとらえ、号令にしたがわせることに戸惑いをいだくこともきっとあるでしょうが、イヌにとってはその方がずっと伝わりやすく、飼い主さんが伝えようとしていることを理解しやすい方法なのだということを、ぜひ理解いただけたら嬉しいです^^
逆に、コントロールしてあげなければ、イヌはイヌとして受け継いできた本能に従って行動します。
別に、「飼い主さんを困らせてやろう、ウシシ(^<>^)」なんてイヌは、どこにもいませんから!
でも、残念ながらその行動は、人間社会からみて全てが歓迎されるものではありません。
手当たり次第に何でも噛むでしょう。
ところかまわず穴を掘りまくるかもしれません。
朝夜かまわず、欲しいものがあるときには吠えて知らせてくれるかもしれませんね^^;
イヌがもし、知性やものごとの善し悪しを判断する心をもっていたとしたら、「ママに悪いなぁ・・・」なんて思いながら家具の足を噛んでいるということになりますよね。
そうなれば当然、罰を受けなければならない行為となります。
人間も一緒。
保健室で上履きホッケーをしていてガラスを割って先生に叱られた時と同じ。(完全に私事です(笑))
つまり、イヌの能力を人間に近しいものとして過大評価することによって、実は私たちは必要以上に彼らに辛い思いをさせているのかもしれないのです。
だからこそ、この学習のしくみを理解していただくことが大切なのだと考えました。
愛すべきイヌたちを、もっと愛するために
最初に、イヌは利己主義的な動物であるとお話しました。
誰かを(おもに飼い主さんは期待するところでしょうが^^;)喜ばせようとしたりは決してしない動物です。
「だって、ほめると嬉しそうな顔するもの〜」
そうなのです。
確かに嬉しそうな顔をしているように見えるんです(笑)
私も愛する4ワンズのオーナーですから、よくわかります。
でも、実は「ほめられる」ことは、イヌにとっては「危険なことがわが身に及ばない=安全である」と
いうことの合図でしかないのです。
「ほめられた時には嫌なことが起きない―――」
これ、私が小学校の頃、苦手な算数のテストでやっと及第点を取ってほめられたとき、
「ああ・・・これで通信簿に赤点がつくことはない!よかった!」と感じた、あの感情と同じようなものです。
安全か、危険か。
イヌという動物は、私たち人間の一挙手一投足をよぉぉく観察していて、わが身に何かがふりかかる兆候はないだろうか??ということをいつもいつもさぐっているのです。
人間と動物の絆は、絶対にあります。 もちろん私もわが家の4ワンズとの絆を信じています。
皆さんのワンちゃんたちはきっと、飼い主である皆さんのことがダイスキに違いありません!
けれど、ダイスキだからといって彼らが必ず皆さんの言うことをきくかというと、それは別の話です。
愛情と、トレーニングは別ものです。
イヌの行動を望ましい方向にコントロールするには、イヌの行動に対し、その直後にごほうびを与えたり、
適度な刺激を与えることを繰り返し行うことが必要です。
また、望ましい行動へとコントロールすることは、イヌと飼い主さんとの愛情をさらに深めていくための
最良の方法でもあるのではないでしょうか?
もし、自分の言うとおりにワンちゃんがピッ!と行動してくれたら・・・
カフェでお食事中に、周囲にご迷惑をかけることなく、きちんと礼儀正しく振る舞えたら・・・
誰と、どんなワンちゃんと会っても、上手にごあいさつができたら・・・
ね、想像してみて下さい。
可愛さ愛おしさも10000倍ですよね!
この喜び、シアワセを、全ての飼い主さんに感じていただけるようになることが、私の願いでもあります。
はい、またずいぶんと長くなってしまいました(汗)
第3回目は、イヌはどんな性質をもって生まれてきたのか?について考えてみましょう。
イヌの行動の中で問題行動とされていることについても、対処策とともに触れていきたいと思います。
(あんまり脱線しないように気をつけます・・・)
第2回目も、最後までお読み下さり、ありがとうございました!